Flume - Palaces
グラミー賞を獲得した前作「Skin」から5年ぶりとなるFlumeの3rdアルバム。フィーチャリングにはOklou、Caroline Polachek、前作でも登場しているKučkaといったフォークトロニカ界のアイコン、オーストラリアのシンガーMAY-A、そして今誰とやってもいい味出してくるDamon Albarnが参加してるんだけど、どの客演も演奏を彩るサブ要素の域を出ることなくノイズまじりのエレクトロサウンド自体がメインのポップなプロダクションになっているのがすごい。
あとこれは好みの問題なんだけど、輪郭がぼんやりしたタイプのシンガーが多い印象があるエレクトロニカ系のフィーチャリングにしてはコントラスト高めのボーカルが多いのも特徴。M2「Say Nothing」を歌うMAY-Aは元々フォーク系のシンガーで、自身の名義で「Say Nothing」を弾き語りで歌っていたのもよかった。
MVに関連性があると伏線あるんじゃないかって気になっちゃう。
Kabanagu - ほぼゆめ
横須賀市出身のエレクトロアーティストKabanaguの2nd。空間を意識した電子音楽と独特な世界観の歌が交錯する去年リリースの「泳ぐ真似」は俺の中で2021年のベストテンに入るほどの快作だったんだけど、このアルバムを聴いて改めて思うのは言葉を大事にしているアーティストだなと。
曲のフォーマット自体は前作とあまり変わっていないものの今作に関しては登録したい曲のジャンルは「エレクトロニック」ではなく「ポップ」。うまく説明できないけどテレ東深夜で偶然耳に入ってしまって沁みるのが前作だったとすれば今作はEテレというか。濃度はそのままに対象世代が爆発的に広がったというか。(決してマイルドになったとは思わない)
あとアー写が本人の写真になっていた。インターネット発のアーティスト以降の世代のアーティストって「XXXを歌ってみた」という表現が顕著なように匿名性とはまたちょっと違う実際の自分のアバター性というか常にメタ視点みたいな意識があってそれ以前の世代とで考え方が大きく違うと思うんだけど、彼のこの変化に関していえばアーティストとしての大きな覚悟を感じた。そういえば前作はMaltineからのリリースだけど今作は本人名義のリリースになっているし、そういう部分が前作と比べて大きく変わったポイントなのかもしれない。
The Bug Club - Pure Particles
英ウェールズ出身の3ピースバンドThe Bug Clubの2021年発表のアルバム。日本にはほとんど情報が届いていないバンドで、SNSを確認する限りバンドのビジュアルは決して若そうには見えないし、すごく有名というわけでもない。アメリカ西海岸のカレッジチャートの50位以内に半年くらいいるバンドのような音はちょっと時代遅れですらある。
少しだけけだるい感じが漂う投げっぱなしの男性ボーカル。ラフな感じでユニゾンする女性ボーカル。抜けの悪いギターサウンド。飾り気のないアレンジ。これが俺の求めていたUSインディバンドと断言してもいいくらい最高のサウンド。
手書きイラスト中心のアートワークも最高にいい。
Moderat - More D4ta
ベルリンの2人組Modeselektorと、Sascha RingによるソロユニットApparatとのコラボレーション・プロジェクトModeratの4thアルバム。手描きイラストのジャケのエレクトロアルバムというのが印象強くて以前からチェックしていたんだけど、三人組というのは知らなかった。
適度な重さで退屈しないダウンビート+米インディポップバンドのようなチル感ある歌ごころ+色鮮やかなシンセサウンドがダンスミュージックとして高い次元で融合しているし、どことなくトランスもシカゴもトリップホップも一緒くただった90年代テクノのテイストもちょっとあって最後まで気持ちよく聴ける。