[やらしそうなボディライン]最近聴いてる20210617[メロンジュースのように溢れる寸前]

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Jon Batiste - We Are

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ニューオーリンズのシンガー/ピアニスト、ジョン・バティステの新作。
オリジナルアルバムとしては2018年"Hollywood Africans"以来ということだが、ジャズピアニストの弾き語りという側面が強かったそれまでの作品と比べると、このアルバムはもっと広い定義のアメリカのオーセンティックなポップスをオシャレに料理した印象。



パーティミュージックとしてのジャンプブルースが楽しい先行シングル"I Need You"、スウィングとストレートを行き来するボーカルが印象的な"WHATCHUTALKINBOUT"、マーヴィン・ゲイ"Sexual Feeling"のカバーで有名な大所帯ブラスバンドHot 8 Brass Bandが参加した"ADULTHOOD"など、多彩なプロデューサーと自身のボキャブラリーを遺憾なく発揮しブラックミュージックを俯瞰・再構築した傑作に仕上がっている。



ルーツと向き合ったこういう「温故知新」的な作品、大好物。




black midi - Cavalcade

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バカウマポストパンククソ野郎だった彼らが、サックス奏者とキーボードのサポメンを入れてさらに進化したセカンド。アートワークにデヴィッド・ラドニックを起用したところも重要ポイント。



鬼のようなユニゾンとブレイクがビタビタ決まる1曲目"John L"、変拍子とメジャー/マイナースケールが目まぐるしく入れ替わりながら複雑に展開する先行シングル"Chondromalacia Patella"、と思えば"Marlene Dietrich"はフレンチポップやボサノヴァっぽい耳ざわりだったりして、アルバム通していい意味で節操がない。



プログレの文脈で語ると別の概念が入り込んでしまうので個人的には敬遠しがちだけど、このバンドはレッチリのフリーみたいな?Sleaford Modのジェイソンみたいな?菅原文太みたいな?少しハスキーで低域が綺麗に伸びる味のある声がプログレっぽくなくていい。




Lucky Kilimanjaro - DAILY BOP

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ラッキリの新譜。等身大の日常を描いた結果、iRobotからメンバーにルンバがプレゼントされたというエピソードを持つ「Superfine Morning Routing」、2020年の夏のマスターピースとでも言うべき「エモめの夏」「太陽」の冒頭3曲はKygoやMatomaなどダンスホールレゲエ寄りのTropical Houseのような味付けも相まって天井知らずの多幸感。



そして眩しい朝日のような前半からアルバムのハイライトとなる「夜とシンセサイザー」を経て夜にフェードアウトしていくようにエンディングを迎える曲順も秀逸。



韻固めのメロとループを基調としたアプローチは前作"!magination"とそこまで変わらないのにスケール感が明らかに違う。ひええ。




David Byrne - American Utopia on Broadway

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スパイク・リーにより映画化されたブロードウェイで上演されたデヴィッド・バーンのショーのライブ音源。
ケーブルやコード、スタンドといった板の上にあるものを一切排除し、フォーメーションを組んで踊り演奏するさまは自由そのもので、このライブのコンセプトとなるさまざまなものからの解放を体現しているように思う。



もちろん演奏曲はどれも珠玉のヒット曲しかない。コンテンポラリーなダンスと舞台演出、そしてもうじき古希を迎えるバーンの衰えを知らないのびのびとしたボーカル。トーキングヘッズ時代は偏屈なインテリ皮肉屋風情もあった彼が、その天井知らずの知性とユーモアとでアメリカが抱える思う深い問題をモチーフにしながらもここまでシンプルで快活なメッセージをポップに体現している。

映画の話ばかりになってしまい申し訳ないが、バーン(=トーキングヘッズ)の金字塔「STOP MAKING SENSE」を軽く凌駕する内容、というかバーンのミュージシャン人生の集大成と言ってもいい。これは生で観たい。