[わかんないよ]最近聴いたアルバム202008[俺はムード派だから]

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Oliver Tree - Ugly is Beautiful

俺的今年の真打Oliver Tree待望のアルバム。ギークなルックスの本人が映るジャケットとアルバムタイトルだけでドン勝を確信。

ヒットシングル"Miracle Man""Alien Boy""Hurt"など、アルバム収録のどこを切り取っても「オルタナティブ」という言葉がまだリアルだった90年代西海岸のDIY+いなたいながらもある特定の世代の琴線をクリティカルにヒットする切ないサウンド。どの曲もタイトルだけ見れば英語がわからなくてもだいたい何を歌っているかわかった気になれるところもいいし、クセが強めながらもそのへんのYouTuberがやりたそうなことを全力でやり散らかすオール本人ディレクションのMV(だいたい最後は車が燃える)も全部魅力的。



ジェネレーションX特有の自嘲や皮肉たっぷりに「俺は負け犬。さっさと殺せば?」と歌ったBeckもそうだったし、ハゲでデブでダサいネルシャツを着て「俺はアンダルシアの犬」と叫びながら轟音サーフサウンドを鳴らしていたBlack Francisもそうだった。人生在籍時からずっとこの立ち位置に君臨し続ける石野卓球も「かっこいいことってなんてかっこわるいんだろう?」となにかで言っていた(気がする)。Oliver Treeも逆説的な美意識を持った「こっち側」のアーティストだと思う。



安田理央さんが彼を評して「音楽性は違えど今の日本人アーティストに例えると岡崎体育」といっていたのはだいぶ的を射ているな。



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絶対忘れるな - HYPERFLAT

7月にリリースされたEP「EZCD」から間髪入れずにリリースされる5MC(一人育休中)絶対忘れるなの新作。( ひと足先に聴かせてもらいました。ありがとうございます!)

不穏なインダストリアル/ハードスタイルの隙間から覗くアイドル特有の清涼感がストロングポイントの代代代の手触りに寄せつつ、J-Pop30年史を俯瞰+再構築する志賀ラミーの作編曲スタイルが遺憾無く発揮されている"インターネット偶然倶楽部feat.梨央(代代代)"、メンバーが敬愛するCKB風の爽快なサウンドに乗せて、車(と女)への偏愛をモチーフにした歌詞が多いCKBとは真逆のリリックを並べるユーモアが痛快な"車がわからない"など、彼らにとって新機軸の楽曲が多く並んでいる印象。
圧巻だったのは宮野弦士が作曲を担当した"ハイパーフラット"。Bruno Mars とCardi Bがアスペクト比4:3でぶち上げた90's R&Bリバイバルのようなマッチョでセクシーなサウンド。これがオールドスクール寄りなぜわすのフロウとすこぶる相性がいい。
ラップに固執しないバラエティに富んだ曲群は前作「EZCD」同様、芸達者なメンバーのパフォーマンスも相まって東京の喧騒をマイペースに闊歩しているようで楽しい。



そしてそんな「東京の喧騒」は、vaperwaveっぽいサウンドメイクでストンといいコントラストを呼び込んでる「chillでill」のような相反する要素があってこそ、というのも分かっている感じがしてなおさらいい。



個人的な今作一番のパンチラインはこの曲最後の「好きにしてんだ、無理にしねえんだ」というひと節。グループのコンセプトをたった1行で力まずさらっと聴かせるのが憎い。

※まだリリース前なので前作「EZCD」のリンクを貼ってます。こちらも2020年の東京を切り取った良作なので是非




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民謡クルセイダーズ&FRENTE CUMBIERO - 民謡クンビエロ(フロム・トーキョー・トゥ・ボゴタ)

コロンビア人プロデューサー/作曲家/マルチ・インストゥルメンタリスト、マリオ・ガレアーノ・トロによるクンビア・プロジェクトFRENTE CUMBIERO(今年のフジロックに出演予定だったらしい)と我らが「ジャパニーズ・ニュースクール・トラッド」民謡クルセイダーズとのコラボ作。昨年行われた両バンドのコロンビアツアーの際に録音されたものだそうだ。

軽快な表拍の摺鉦(チャンチキ)と裏拍のべチャッとしたRX-7のクラップがベースラインと絶妙に絡み合う「日本最古の盆踊り民謡」こと"虎女さま"や、「イーアルカンフー」モチーフのマンボがどことなく昭和B級活劇映画っぽい"マンボネグロ大作戦"に顕著なように、ともすれば日本ではスノッブな存在になりかねないラテンミュージックを敷居低めのダンスミュージックに料理するさまは民クルの真骨頂。



デジタルと親和性が高く、近代ダンスミュージックの源流のひとつといっていいクンビアをモチーフに新しい価値観を作り出している、ある意味民クルと同じ指向性を持つFRENTE CUMBIERO(それはMAD PROFESSORと共作している時点で容易に理解できる)とのジョイントは相性が悪いはずがなく、より土着的な「一介の大衆音楽」に仕上がっている(もちろん誉め言葉)。



残念だった今年の夏をちょっとだけ取り返した気分になる快作。





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The Pogues - Live in London(with Joe Strummer)

1988年歌姫Kirsty MacCollとのデュエットクリスマスソング"Fairytale of New York"のヒット以降、ワールドワイドに地位を築いたケルティック・パンクバンドPogues。追い風の91年、当時の最新作「Hell's Ditch」をひっさげてワールドツアーに出る予定だったけど、ボーカルのShane MacGowanがアル中で音楽活動ができない状態になってしまい脱退。急遽「Hell's Ditch」の共同プロデューサーだったThe ClashのJoe StrummerがShaneの代役となって敢行されたワールドツアーのロンドン公演を収めた1枚。



もともとPoguesはデビュー当初The Clashのライブのフロントアクトを務めて以降、映画「Straight to Hell」でも共演するなど親密な関係を継続していたようだし、なによりJoeは最新作のプロデューサーを務めたくらいだからバンドの音楽性も深い部分で理解している。ロンドンパンク界隈でもトラディショナルな音楽に造詣が深いJoeにとっては突然のピンチヒッターではあったけどこのコラボレーションは必然だったし、この夢のタッグを受け止める双方のファンの「待ってました」感もすごい。急造バンドでミスも多いし、オリジナルボーカルの「酔いどれ詩人」シェーンの歌声はPoguesにとって唯一無二の存在なんだけど、Joeのカッスカスのシャウトで歌われる"Yeah,Yeah,Yeah,Yeah"もかっこよすぎる。

半分サービス精神かもしれないけど、"London Calling"、"I Faught the Law"、"Straight To Hell"、"I Fought The Law"、"Brand New Cadillac"といったThe Clash時代のナンバーもアコーディオン・ホイッスル・バンジョーを使ったPogues流のアレンジになっていてシビれる。最高。