[恋は瞬発筋で]最近聴いたCD202005[スマイルしちゃうんだぜ]
Joan Thiele - Operazione Oro
イタリアの北部ベローナ出身のSSWの新作。インターネットで調べてもなかなか情報にありつけないくらい日本では知名度が低いんだけど、本国ではFENDIのCMに出るほどカルチャーやファッション、DIYイムズも含めてかなり支持されているんだそうだ。
オーガニックな音のテクスチャとリンドラムとエキゾチックなボーカルが絡み合う2017年リリースの"Armenia"がきっかけで俺はチェックするようになったのだけど、そういった要素は残しつつもFKAツイッグスのようなコンテンポラリーなエレクトロニカ/グリッチっぽいところも見え隠れするし、今よりも少しだけ埃っぽい90年代トリップホップライクなビートが登場する曲もあったり、マルチプレイヤーとしてもボーカリストとしても表情豊か。
3月にリリースされたイタリア人ラッパーNitroとのコラボもバシっとハマってるし、アコギをつま弾きながら歌う姿もハマる。何やらせてもさまになる。
Circa Waves - Sad Happy
リヴァプールのCirca Wavesの4枚目。去年UKチャートでスマッシュヒットを記録した3枚目から半年足らずのリリースでしかも2枚組。アルバムは"Happy"と"Sad"の2枚組構成になっていて、"Happy"が今年1月に配信でリリース、それに"Sad"を追加した形でフィジカル/配信でリリースというユニークな展開。これまでもソングライティングはフロントマンのキエラン・シュッダルだったのだけど、今作はキエラン自身がプロデュースも担当というワンマンっぷり。
ブラックミュージックっぽい女性コーラスをフィーチャーしたり、ギターバンドの枠を飛び出してピアノがリードになってる曲もあった前作"What's It Like Over There?"と比べるとUKインディロックっぽい感じに振り戻った感じがあるのが今作の特徴で、ファーストシングル"Jacqueline"のThe1975のような高揚感からずーっと引っ張り続けて全7曲あっという間に走り抜ける"Happy"と、比較的穏やかなトーンとおおきなうねりみたいなダークな展開を感じ取れる"Sad"という構成は、2枚組なのに胃もたれしないコンパクトな内容で身構えなくてもすぅーっと入ってくる。
「人生泣き笑い」「Good Times,Bad Times」「ピンチの後にチャンスあり」etc.喜びと悲しみの相反する感情にこそ希望は存在する(最後のは違うか)し、どちらか片方だけをクローズアップしてポジティブになれなんていう意見は薄っぺらいもので、最近SNSを見てるとやたら二元論の思考回路しか持ち合わせていない言い合いを見かけることも多くて、なんかそれってやっぱり違うよな、清濁あわせて飲み干す器量が今一番必要なんじゃないかな、なんてことを聴きながら感じた次第。
MANGADORON - Getting Old...
飲酒グランジトリオ・マンガドロンの3枚目?4枚目?兄弟RAPデュオ山口兄弟とのコラボユニット「MANGADORON × 山口兄弟 」の活動もあったので頻繁にリリースしている印象があったけど「働きたくない、おっぱいもみたい」のアルバム(タイトル忘れた)からもう3年経ってた。
彼らの曲に登場する主人公は、自分では自分自身を理解しているつもりなんだろうけどその一方で自分を信用できないのも自分で、そんな自分を人に理解してほしいと思ってはいるけれど、そんなん決まり悪くて他人に言えるわけがない。結果、酒を飲む。また1日が終わる・・・の繰り返しで、それそのまんまゆうたレッドじゃないかと思うんだけど、淡々と語りながらどんどん熱がこもっていき、しまいには感情をコントロールできなくなってしまったけどふと我に返って後悔する「酒飲みあるある」的な展開の"オデッセイ"は新録されて彩度が上がり、改めて「この人が歌わないと成立しない曲だな」と痛感する。
自問自答して悶絶のあげく泥酔する中年なんてちっとも美しくないけど、なんでかMANGADORONはチャーミングに映るから不思議だ。
ジェニーハイ - ジェニーハイストーリー
ふと「そういえばコロナの影響で興行が延期中止する直前に観に行ったライブって何だったっけ?」と思ったんだけど、最後に観に行ったのは2月半ばのジェニーハイ@Zepp DiverCityだった。会場に向かう途中マスクを忘れてしまい、東京テレポート駅のキオスクであわてて買ったのを覚えている。
ライブの内容は同行者のブログを読んでもらうとしてリーダーは現在の日本のポピュラーミュージックシーンの最重要人物の一人、芸人が2人いるとは思えないリズム隊、現代音楽界ではトップランナー級のスキルを持つピアニストが集まって展開の多いトリッキーな楽曲を演奏し、時には楽器を置きTRAP/EDMトラックに乗せ5MCのラップチーム編成に切り替える。
幹の部分は何歌わせても名曲になるアイナ・ジ・エンドを連れてきたりしてがっちりと押さえつつも、ライブ同様いろんな景色を見せてくれる作品に仕上がっている。
川谷絵音がインタビューで言っていたのだが、このアルバムのレコーディングに臨むために制作したデモはゲスの極み乙女のメンバーが演奏したんだそうだ。ゲスの極み乙女やindigo la Endの活動に陰りが見えたわけでは決してないんだろうが、タレント性とは別にある無尽蔵のポテンシャルを秘めたジェニーハイが現在の彼の本丸なんじゃないかと俺は勝手に想像している。
前述のライブでも、アルバムの最後を飾るド直球のバラード「まるで幸せ」で幕を閉じたところもなんか納得できる。
ジェニーハイ「まるで幸せ」 (2020年2月18日 Zepp Divercity)
https://gyao.yahoo.co.jp/episode/5e7357b5-335a-433c-976a-e31b0936bf1b?