[床にはたぶん]最近聴いたCD201911[バーボンソーダグラス]

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Cigarettes After Sex - Cry

ブルックリンのドリームポップバンド、Cigarettes After Sexの2nd。
耳元で囁くようにやさしく丁寧に歌われるボーカル、深いエコーとフィードバック少なめのディレイを絡めながらメロディラインを追いかけるギター、全体像がつかめないくらい彼岸で鳴るパッドシンセ、ルートだけを最低限の手数だけはじくベースライン、ビートを刻むというよりも寄せては返す波に消される足跡をつけ続けるようなドラム。ドラマチックな展開も皆無でずーっとぐるぐるコードが循環されるし、ぶっちゃけ各曲の違いもあまりない。つまりアルバムの印象は見事なまでに前作「K」と何にも変わってない。そこには何にも新しいものもないけど、確実に今必要な音。



タイトルも簡潔だし、歌詞も日本人の俺が聴いても何となく意味が分かるくらいに簡単な言葉で淡々と歌われているのだけど、この簡単な言葉の行間の残像にネイティヴにしか理解できない感覚があるんじゃないかと思う。前作「K」リリース後に行われた来日公演を観に行ったとき超満員のリキッドルームの大多数が外国人だったのも何となく腑に落ちる。
あと"There was a hentai video that I saw"というフレーズが冒頭を飾る「hentai」という曲を聴いて、変態という言葉は万国共通なのだなと理解した。




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Kim Gordon - No Home Record

90年代グランジ/オルタナのゴッドファーザーSonic Youthとして40年のキャリアを誇るキム・ゴードン、意外にも彼女のキャリアの中で初となるソロアルバム。
低いところで共鳴するコントラバスとバリトンサックスのハーモニーから一転、クリップしまくりのバスドラのダウンビートがやかましく鳴る冒頭"Sketch Artist"にまずびっくりした。歌い出しを聴くまで違う人のアルバムを間違えて再生してしまったんじゃないかとしばらく思ってしまったくらい強烈。



基本的にはキム・ゴードンのイメージに忠実な不穏な不協和音としゃがれた女性ボーカル(つまりSonic Youth)で展開する曲なんだけどその後は抜けの悪いTRAPのような"Cookie Butter"や、マーク・スチュワートがやりそうなダークな4つ打ちとベースフレーズで押しきる(もちろん全部歪んでる)"Don't Play It"など、Sonic Youthよりもビートがタフでコンテンポラリーな感じ。

御年66歳になった今もオルタナ、アート、ファッション界のカリスマとして老け込むことなく発信し続けることもすごいけど、ナチュラルな形で周囲にアンテナを張り巡らせて刺激的な音をキャッチし続けるキム姐さんの臭覚もすごい。




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チミドロ - なのかな?

スズキナオを中心とした7人組ラップバンド・チミドロの12年ぶりとなる2ndアルバム。
DJ FUNKやURなどといったシカゴハウス/ベースミュージックがもつ「言葉の反復が作るうねり」が気持ちいい「2パターン」(余談だがYouTubeにアップされているライブ映像でシカゴハウスのスタンダードナンバーDJ FUNK"Pump It"のカバーが聴ける)、朴訥な冒頭からサンバビートに急転し謎の盛り上がりを見せる「酒地蔵」、スキットからの流れで始まる「わんにゃんパーク」からはどことなくTHE POP GROUPやRIP RIG + PANICのような80'sUKNW以降のホワイトファンクが持つアバンギャルドな雰囲気を感じ取ることができる。イメージよりもだいぶフィジカルの強さが際立ってるアルバム。



そして「とりあえずはだかだね/って自分もはだかだね/そこからなんもないのはもうわかってる」と綴られる「SHINE旅行」は並べられた言葉の端々に甘酸っぱさと苦さたっぷりのパンチラインになっていて、一聴すると聞き流してしまいそうなリリックがトリッキーなビートに乗ることで無限の想像力・情景を駆り立ててくれる平成最後のマスターピースなんじゃないかなと個人的には思ってる。




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KOKOKO! - Fongola

コンゴの首都キンシャサを拠点に活動する地元ミュージシャン、楽器の発明家(?)、そしてフランス人プロデューサーで構成されたエレクトロ・グループ KOKOKO!のデビューアルバム。
トライバルでワイルドな躍動感がみなぎっているアフリカンビートとエレクトロニックシステムとの組み合わせは計算されているんだかされていないんだかわからないポリリズムのような揺らぎがあって、音楽的にはかなり雑なはずなんだけど奇跡的に気持ちよく仕上がってる。



ノイズ音とパーカッションのループの中で「遊んどけ、遊んどけ」にしか聴こえないボーカルがリフレインする"Azo Toke"を筆頭に、COOL/HOTの二面性をもつアフロビートのなかにパンキッシュなアクセントもあって、じゃがたら「南蛮渡来」みたいなニューウェイヴっぽさがあるところが個人的に好み。アクの強いアフロビートを嫌味にならない程度に咀嚼したうえでサウンドをまとめているエレクトロニック担当のフランス人プロデューサーDébruitがかなりいい仕事しているんだと思う。



自作楽器ってどういうこと?明和電機的な感じ?と思ってライブ映像を観たら、結構ブルーシーター系の感じだった。楽器のコンディション整えるの大変そう。