[君がロシアで]最近聴いたCD201908[僕がたぶんアメリカ]
吾妻光良 & The Swinging Boppers - Scheduled by the Budget
日本ジャンプ・ブルース界の大エース、吾妻光良率いるスウィンギン・バッパーズ、5年ぶりとなる新譜。
結成40年、メンバーもほぼ全員還暦越え。町内会のお祭りから大規模ロックフェスまで全方向対応のジャンプ&ジャイブにのせてワイドショーネタのような歌詞でユーモアたっぷりに言葉遊び(というかオヤジギャグ)を繰り広げるいつものスタイルなんだけど、ニコニコ笑いながら聴いているとふとした瞬間に胸が締め付けられるような瞬間が訪れて、いっつもそこで涙腺が潤む。中納良恵が歌うフランク・シナトラ"Misty"や人見元基(吾妻と同級生なんだそうだ)が歌うオーティス・レディング"Try A Little Tenderness"といったスタンダードナンバーもまたいい。
人生は喜劇、喜劇の中にペーソス。この人たちの音楽は「人生の教科書」というと大げさだけど「人生を楽しく生きるコツ」に満ち溢れている。
Labrinth, Sia & Diplo - LSD
UKのシンガーソングライターLabrinth、先日のフジロックでも大盛況だった覆面シンガーSia、そしてMajor Lazerの総帥として大活躍のベースミュージックの千両役者Diploの3人によるドリームチームのデビューアルバム。
3人の頭文字をとったタイトル、アーティスト写真のヒッピー感、ジャケットもビートルズ「イエローサブマリン」のようなぎらついた感じも相まって、どことなくサイケデリックなムードが漂う感じ。
枯れたハワイアンのような演奏からDiploのお家芸ともいえるボーカルのカットアップでサビを構築する"Thunderclouds"、8分のシンセベースがぐいぐいポップに引っ張っていく"Angel in Your Eyes"、カリブの乾いた空が広がるようなDiplo節炸裂の"No New Friends"、ピアノのみの伴奏でLabrinthとSiaという稀代のシンガー2人の歌声が堪能できる"It's Time"などひとクセもふたクセもある曲ばかり。
Diploの音使い、展開の作り方、音符の置き方etc.DTMやってる人間からするとすごい勉強になる。
AFRICA EXPRESS - EGOLI
デーモン・アルバーンによるアフリカミュージシャンとの交換日記ことAFRICA EXPRESSの新作。Super Fury AnimalsのグリフやYeah Yeah Yeahsのニックなんかも参加していていることも関係しているのか、デーモンによるアフリカンコラボ関連音源の中ではかなりアーバンなダンスミュージックに昇華されていて、そういう意味ではデーモンの持ち駒の中で一番近いのはGorillazかもしれない。
アフリカに傾倒するデーモンにせよ、カリブに傾倒するディプロにせよ安易にワールドミュージックに近寄ることを軽蔑する音楽ファンもいるかもしれないけど、AFRICA EXPRESSだったらOTIM ALPHAやBCUCのようにこんなことでもないと世界中のリスナーまで届かないまま広大なアフリカ大陸に埋もれてしまいそうなアーティストがどんどんフックアップされるだけでこのプロジェクトは大成功だと思うし、それは80年代のTalking Headsやデヴィッド・ボウイの尻軽さと同じことだと思う。
アルバムの数か月前にリリースされたミニアルバム「Molo」もすばらしいのであわせてどうぞ。
おとぼけビ~バ~ - いてこまヒッツ
おとぼけビ~バ~の代表曲を網羅した再録ベスト?的な位置づけのアルバム。現在少年ナイフも所属するロンドンのDamnablyレーベルからリリース。去年はCoachellaに出演(この年Coachellaに出演した日本人アーティストが彼女たちとX JAPANの2組だったってエピソードは何度聞いても笑う)そして今年のSXSWにも2回目となる出演を果たし、活動は完全にワールドワイド。そういやこのアルバムもBandCampでリリースされていたのでそこで手に入れたのだった。
乙女と間女(という言葉があるかどうか知らないけど)を行き来する一貫した歌詞の世界は情に満ちていて男前。パンク・メロコア勢にありがちな「いい人そうな歌詞」はひとっつもない。でもオルタナ/パンクサウンドに載せた京都弁で歌われるそれは天才的に気持ちがいい。