[シャッターがガチャガチャと軋み泣いてる]最近聴いたCD201905[路地裏の激しく新しいキスで]

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The Good,the Bad & the Queen - Merrie Land

ブラー/ゴリラズのデーモン・アルバーン、アフロビートの名伯楽トニー・アレン、クラッシュのポール・シムノン、そしてデーモンの懐刀こと元ヴァーヴのサイモンによる異色バンドThe Good,the Bad & the Queenによる去年リリースの2ndアルバム。

このアルバムのリリース時期から逆算するとレコーディング時期は「Humanz」「The Now Now」というゴリラズのアルバムを2枚立て続けにリリース~2度の来日公演も含めた大規模なワールドツアーを敢行していたころ。なにもこんな多忙な時期に制作しなくても、、、と思うんだが、歌詞の内容やインタビューでも言及しているとおり、これはどうしても2018年にリリースしなければいけない理由(Brixit問題)があった、と考えるべきなんだろう。



世界のリーダーだったころは遥か昔、中も外もボロボロな状態のまま歴史的な選択を迫られているイギリスの現状を、ブリティッシュフォーク、ケルトなどのトラディショナルなフレイバーが垣間見れるノスタルジックなテクスチャで柔らかく包み込んだようなアルバム。このアルバムも含めてここ近年のデーモン絡みの音源はすごく質感にこだわっている印象。





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Stephen Malkmus - Groove Denied

オルタナ・ローファイ界のちい兄ちゃんことスティーブ・マルクマスの新作。自前のバンドThe Jicksは今回お休みで、シンセサイザー、ドラムマシンなどを用いてDIY制作されたアルバムなんだそうだ。電子音だからジャケがアルミ箔なのか(たぶん違う)。



聴いてみるとヤズーやヒューマンリーグを筆頭とした1980年代シンセポップ風味で一瞬血迷ったかな?と思ったけど、計算されてんのかされていないのかわからないシンセのレゾナンスは彼の唯一無二の持ち味でもある枯れてゆがむ西海岸サウンドにもいい感じでマッチしているし意外と華やか。そういや去年出たThe Jicks名義の「Sparkle Hard」でも少しだけエレクトロ風味の曲があったしな。

キャリアの中でうっかり電子音に寄り道したら意外と面白いものになってた、って点ではピート・シェリー「Homosapien」、ニール・ヤング「Trans」ともタメを張る良作。





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ドレスコーズ - ジャズ

サブスク系サービスが凌駕する2019年に「アルバム」というくくりがどんどん意味をなさないものになっているというのは肌感覚で理解しているつもりだけど、1作ごとに壮大なスケールで全く異なるトータルコンセプトをぶち上げ続ける志磨遼平にはいつも頭が下がる。

トーキングヘッズ「Stop Making Sense」のようなアーバンなダンスバンドアルバムとなった前作「平凡」もそうだし、「ティン・パン・アレイ」をはじめとした毛皮のマリーズ時代だってそうだった。デヴィッド・ボウイばりのトリックスターとして君臨し続ける彼の作品が決して薄っぺらいものにならないのは、マクロ・ミクロ両方の視点で「人類の行く末」という一貫したメッセージを掲げているところ。



今回はアルバムの前に音楽監督を担当した舞台「三文オペラ」から地続きでバルカン/ジプシーといった辺境音楽を取り入れ、椎名誠のSF短編みたいなタイトルや歌詞の言葉遊びも相まって目の前にディストピアが広がっていくような曲群。そしてそんな中で唐突にぶっこまれる「もろびとほろびて」のコンテンポラリーなサウンド。いつだってそうだったけど、今回のアルバムは彼のキャリアの中で一番ロマンチックな作品かもしれない。





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Dexter Story - Bahir

LAのジャズ・ソウル系プロデューサーで、前作「Wondem」がきっかけでアフロミュージック界で要注目人物となったデクスター・ストーリーの新作。



前作同様西海岸のスピリチュアル・マエストロことカルロス・ニーニョが共同プロデュースした今作では、エチオピアの歌手やプロデューサーが多数参加してクールな中にも体の内側からじわじわと体温が上がっていくような曲が根幹にある中で、アフリカともアラブともヨーロッパとも思えるような出所がよくわからないような曲もあって聴いていて飽きない。



アフリカ・カリブ・ラテン圏の音楽を比較的よく聴く理由はビートに対する信頼もあるけど、音楽が鳴っている先には最終的に希望があるからだよなぁと最近よく思うし、先のデーモン・アルバーンもディプロも渋さ知らズもきっと同じことを考えているんじゃないかな、と勝手に思っている。