The Garden - Mirror Might Steal Your Charm
米カリフォルニア出身、イケメン双子ネオパンク・デュオ The Gardenの3rdアルバム。レーベルはエピタフ。
西海岸サーフロック起源のオルタナみたいな曲群のなかで、安っぽいシンセとオケヒットを連打しまくる":("、、今年で結成30周年となるグランジゴッドMudhoneyのようなけだるい感じが前面に出た"Voodoo Luck"、Mrバングルみたいな人を食ったような支離滅裂な展開が目まぐるしい"stallion"など、ネオパンク、ポストモダンロックというよりかは「MTRを手に入れた中学生」のような宅録曲が多く、よくもわるくも90'sレイドバック感がある。
演奏は下手くそだしどこまで計算されているのかわからないけれど、統制が取れてスマートすぎる音楽も多い昨今、こういった耳障りでデタラメな音楽の中に垣間見る闇雲な説得力。そういうところも90年代っぽい。
ジェニーハイ - ジェニーハイ
BSスカパーの番組「BAZOOKA!」から出た企画バンドのミニアルバム。役者揃いのメンバーを料理するのは、このバンドのリーダーでもあり現在のJポップの最重要人物の一人である川谷絵音。
アルバムを一聴してまずビビるのはとにかく新垣隆のピアノがガンガン攻めて来るところ。過去のスキャンダルによってお茶の間からはねじれ曲がった評価を受けていた彼の名誉挽回とでもいうべきプレイ。ポップフィールドとは離れたところに籍を置く彼のスキルとポテンシャルがいかんなく発揮されている。ピアノの演奏とは関係ないけれど、アルバムのハイライトとなるパスザマイク「ジェニーハイのテーマ」での
俺はもうゴーストではない、もうゴーストではない
俺のピアノをただ聴け
というリリック(作詞:川谷絵音)も、新垣が口にすればおじさんのまがいものラップがブルージーなパンチラインに化ける。シビれた。
そしてイッキュウの歌声もいい。目まぐるしい変拍子とオルタナティブな音像を繰り広げ海外での評価も高いtricotというバックボーンを完全に煙に巻く「そのへんのOLが好きそうなふつうの歌謡曲」として聴かせる正統派の歌唱力。これもいい。
リズム隊が芸人というトピックもすごいし、このアクの強いメンバーを川谷絵音はよくまとめ上げたなぁと思いつつも、どっからどう切り取っても川谷絵音だな、といった感じ。春先のデビュー曲から待っててよかった。
Soulwax - Essential
ベルギーのイカれた兄弟soulwaxの新作。12年振りとなった前作「From Deebee」から1年経たずしてリリースされたこのアルバムは、英BBCのRadio 1にて1時間に渡ってオンエアされたトラックをコンパイルされたもので、既存曲のラジオ用リミックスを作るはずがそれまで使用していなかった機材に切り替えてまっさらな新曲を作る方針に変更し、2週間足らずで制作されたんだそうだ。無茶苦茶だ。
「From Deebee」というアルバムは、地下潜伏の12年間であしゅら男爵のもう片一方:元祖マッシュアップユニット2manydjsのロック的ダイナミクスと、プリミティブなエレクトロの響きを重視したsoulwaxとが完全に住み分けが完了したな、と思わせる作品だったが今回のアルバムはそれをさらに深く掘りこんだ印象。
トラック名もEssential OneからEssential Twelveというひねりの無い文字列扱い。かなりストイックなエレクトロアルバムなんだが、きっとこれがライブパフォーマンスになるとまた躍動感あふれるバンド編成でガラッと見せ方を変えてくるんだろうなきっと。
この人達はいつも1粒で3度楽しめる。
The Police - Reggatta De Blanc
スティング、アンディ・サマーズ、スチュワート・コープランドの魔性のトライアングルPoliceの2nd。大ヒットシングル"孤独のメッセージ""Walking on the Moon"などを収録した出世作で全体的にレゲエをイメージさせるアレンジが多い中、アルバムラストは性急な8ビートのパンク「no time this time」があったり、バラエティに富んでいて聴きやすい。リリースから40年経った2018年に冷静に聴くと1stアルバム「Outlandos D'Amour」にはやはり「パンクNWもどき」感が少しあったんだけど、この作品にはそんなまがいもの感は皆無。
もともと3人ともジャズ、フュージョン、プログレ畑出身者が集まってパンクの体でデビューした「羊の皮をかぶったオオカミ」状態のバンドなので、まがいものとは正反対の高いスキルを持ったミュージシャンだったんだけど、このアルバムはテクニックとパッションが高い次元で交差した、とても聴きごたえがある作品に仕上がっている。
その高いスキルの源となっているのは「3人で完結するアレンジ力」なんじゃないかなと思っている。なるべくシンプルな音数で、サポートなしでライブ演奏してもそん色はなく、曲の純度を高めてる。過去のインタビューを読み漁ったわけではないけれど、きっと意識的にそうしていたんじゃないかと思う。
このアルバム、そして次の"Zenyatta Mondatta"くらいまではそういったシンプルなアレンジを駆使した演奏だったんだけど、それ以降はいわゆるスタジアムバンドっぽい音になってしまい、テクニックとパッション自体は高いものの交わる点はだんだん下降してしまう。もちろん後期のアルバムだっていい曲はたくさんあるものの、バンドとしての熱の塊は圧倒的に初期の方が強力。