[電話もかけずに]最近聴いたCD201711[会いに行こう]

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The Drums - Abysmal Thoughts

Anti Recordsに移籍後初となる3年振りの最新作。前作「Encyclopedia」では大半のエレクトロパートを担い、ライブではタンス(モジュラーシンセ)の前で梅沢富美男みたいな不思議なおどりを踊っていた相方グラハムもいなくなり、ついにボーカルのジョナサン・ピアースのソロプロジェクトになった模様。



ソロプロジェクトになったことで、サウンドは彼らを一躍スターに押し上げたファースト"Let's Go Surfing"の頃の、賢者タイムのように虚無感たっぷりのサーフロックバンドに戻ったんじゃないかと思う。"Encyclopedia"での「さらっとしたErasure」から、また「爽やかなJoy Division」に戻った、みたいな。サウンド的にはあまり難しいことをやるバンドではないし、どことなくサーフロックやカントリーのような要素が見え隠れするので、源流はJoy DivisionというよりもThe Smithなんじゃないかなと個人的には思っている。

にしてもこのジャケ。この人イヴ・サンローランのモデルとかやってなかったっけ・・・。


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DJ Katapila - Trotro

正直な話をすると今まで聴いていた音楽の延長線上で音楽を聴いていて、これは今まで聴いたことがない!とびっくりする機会というのはここ10年くらい、ほぼない。「最近の音楽は過去の焼き増し。XXは●●のパクリ」とイキるのも馬鹿馬鹿しいので、そういうときはなるべく地域性の高い音楽を聴くことにしているんだけど、そんな中最近出会ったのがガーナ出身のDJ KATAPILA。



疾走感のあるむき出しのTR-808に乗るアフリカン・チャントとパーカッション。例えばデジタルクンビアなんかは「これとこれを掛け合わしたらおもしろいんじゃないかなー」という狙った感があったんだけど、こっちは雑ではあれど「ただ乗せただけ」にならない強靭なシカゴハウスに仕上がっている。気持ちがいい音を突き詰めていったら、一周回ってトラディショナルなマナーに近づいてしまった、という好例。


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Wrongtom, The Ragga Twins - In Time

80年代から活躍し、90年代クラブシーンでは欠かすことのできなかったブレイクビーツ/ジャングルMCの大御所Ragga Twins師匠と、UKのレゲエプロデューサーWrongtomによるコラボアルバム。Ragga Twins絡みの作品だと気が付かずジャケが素晴らしいなと思い手に取ったんだけど、このイラストレーターTony McDermottってMad Professorのジャケとかやってる人か!なるほどなるほど。



ド直球80年代ダンスホールに乗るのは我らがRagga Twins師匠の寸分狂わぬユニゾンMC。もうこれだけで昇天もの。というか、Ragga Twinsがダンストラックに単発フィーチャリングすることはたくさんあってもこういうアルバム単位でリリースしている作品も少ないし、そもそもRagga Twinsがルーツレゲエをやっているところも実はほとんど聴いたことがなかったので非常に新鮮。

そしてこの作品聴くまでWrongtomのことを知らなかったんだけど、今回のRagga Twinsみたいなガッツリコラボアルバムを3作出しているそうなんで、今度チェックしてみよう。


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Blur - Think Tank

莫大なセッションと、切り貼り番長ウィリアム・オービットの根気で完成した傑作アルバム「13」リリース後、ソロ名義でのマリミュージックへの傾倒、ゴリラズの全米進出成功と、好きなことやればやるだけ胡散臭い存在になりつつあったデーモン。加えて「Song2」以降、サウンドの核となりUSオルタナ色を出していたグレアムが今回のアルバム製作中に脱退。そしてこのアルバムリリース後にバンドは空中分解し、深い眠りに入ることになるので、メンバーにとってもファンにとっても「なかったこと」になっているアルバムだけど、今改めて聴くと、復帰作「The Magic Whip」はこれの延長線上ととらえることが出来るし、ルーツミュージックに対するリスペクトを、新しい感覚で温かみを持って(ここが重要)化学反応させる、という点で後期クラッシュに近い内容になっている気がする。ベン・ヒリエ、前作から引き続き登場のウィリアム・オービット、そしてブライトンの加山雄三ことノーマン・クックといったプロデューサー陣が各曲独立して俺節吹かせているところも後期Clashっぽい。



で、レコーディング途中に脱退したグレアムが唯一参加していて、アルバムの最後を締めくくる「BATTERY IN YOUR LEG」が、その化学反応の副作用みたいなものなのか、彼らの歴史の中でも、1,2を争うくらいにヒリヒリ沁みる。