[安心させるには]最近聴いたCD201708[姉貴が言うにゃ食事はニューオリンズ]
Daddy Issues - Deep Dream
米ナッシュビル出身の3ピースガールズバンドDaddy Issuesの1stアルバム。どっしりとしたミドルテンポにビッグマフかませた歪みギターは紛れもなく90年代グランジガールズバンドの音。
90年代グランジって、ネガティブで内向的でヒリヒリとしたサウンドだったし、その中にいた女性ボーカルのバンドは「女性性」みたいなものがクローズアップされることが多かったけど、このバンドは全体を取り巻く雰囲気が非常にポジティヴでポップ。牧歌的ですらある。その屈託のなさがキュートでとっつきやすい。L7ではなくVeruca Salt。
まだメンバーは二十歳そこそこだと思うのに、どうやったらこの音に行きつくのだろうか?と思ってたけど、シアトル空港にはSUBPOPのおみやげ屋があるくらいなので、アメリカではポピュラーなものなのかもしれない。
餓鬼レンジャー - キンキーキッズ
火の国スキル餓鬼レンジャー、新メンバーも加わり自身のレーベル「東雲レコード(いい名前)」からの新生リリース。
好きが高じてAV監督になるほどエロ(とギャンブル)をテーマにしたら孤高のスキルを発揮するグループだった彼らではあるけれど、そういった短絡的で即物的になりがちなテーマの隙間にあるブルージーな情景の描写が相変わらずずば抜けてうまい。それを支えるYOSHI+ポチョムキンのMCスキルと声の強さがあってこそだけれども、アルバムが出るたびにいつもそこに唸ってしまう。
そして深夜のラジオコントのようなSKITや「運がYEAH」のアウトロで脈絡なく突然ぶっこまれるポチョムキン扮する熊本の老人の芝居もハイクオリティ。これ脚本本人たちが書いてるのかな。だとしたらすごい。
Baio - Man Of The World
Vampire Weekendのメンバー、クリス・バイオによるソロプロジェクトBaioの2nd。前作「The Names」は、個人的にはここ10年でフェイバリットと言ってもいいほどの名作だったんだけど、今回もまた素晴らしい内容。
テクノロジーを駆使しつつも決して依存することなく過去の音楽に敬意を表して新しい音楽を作る、というところはVWにも通ずる精神だと思うんだけど、こちらはひとりでのびのびと作っている印象で、ボーカリストとしても表現が豊かになった気がする。NW感がありつつも、チャラくもくどくもなり過ぎないハリウッド感が心地よい。
特に"Sensitive Guy"から終盤にかけての展開が秀逸で、これは今どき気にするアーティストは少ないと思うけど次の曲が始まる際のテンポの良さもまた痛快。そういえば前作もそうだった。ここ意外とBaio本人が気にしているのかもしれない。
カステラ - 100時間連続
先日、「1991年リリースの洋楽は名盤揃い」というネタを考えてた時に、じゃあ日本では何が流行ってたんだろう?と考えていて。
ぱっと思いついたところでフリッパーズギター「ヘッド博士の世界塔」、UNICORN「ヒゲとボイン」、BUCK-TICK「狂った太陽」、X JAPAN「Jealousy」、あと電気グルーヴ「FLASH PAPA」あたり。ときは渋谷系前夜。インターネットもまだない時代、グランジもマンチェスターもミクスチャーも後追いはあれど同時進行まではしていなかった印象。で時を同じくしてバンドブーム末期。「イカ天」も前年末に放送終了し、いわゆるビートパンク的なバンドサウンドのシュリンクが急進行していく中リリースされたのがこのアルバム。
よく読み解くと哲学的な面をもつ内向的な歌詞を、当時のティーンズのバンギャに受けるようなユーモアとチャーミングさを盛り込んでミクロからマクロへ変換させる技術(どこまで意図的なのかわからないけれど)は、今聴いても目からうろこが落ちるほど。まだ引きこもりもヲタクもインターネットという社交性をもちあわせていなかった時代の「メッセージなんてない」というメッセージソング集。