MONO NO AWARE - 人生、山おり谷おり
八丈島出身の4人組MONO NO AWARE、もうあっちこっちのフェスに引っ張りだこの彼らの1stアルバム。
世代的なモードの要素もあるんだけど、カセットテープ倍速ダビングしたかのような音質で言葉遊びのセンスが光るポップソング「マンマミーヤ!」、鈍臭い中にもキッチュでウィットにとんだメロディとビートがfranz ferdinandみたいな「イワンコッチャナイ」、淡々としたオープニングから一転、平衡感覚がなくなるかのような混とんとしたエンディングを迎える「駆け落ち」など、オリジナリティに富んでいて、あえて言うなら初期フジファブリックのようなワクワク感がある。
あとこの世代のアーティストって、ビット数高めで情景や感情を事細かに説明する歌詞が多いのが特徴だと思うんだけど、このバンドの歌はどの曲もリズム感を丁寧に解釈しつつも、出来るだけ自分の言葉で、そして出来るだけ少ない言葉で紡いでいる感じがして、個人的にグサグサ刺さる。頭が下がる。
Beach Fossils - Somersault
ブルックリンのインディロックシーンの中心(のほう)にいたBeach Fossils、久々の新作。
NYインディロックシーンの最盛期だった2012年にリリースされた前作"Clash The Truth"は高揚感のある作品だったのに対して、比較的落ち着いた内容。
冒頭の「This Year」をはじめとして、全体的にネオアコっぽい雰囲気もあるし、アコースティックギターやストリングスを多用した近年のティーンネイジファンクラブみたいな、ギターポップのあるべき進化、とも思う。
これからの季節にぴったりな、さわやかなんだけどちょっとだけだるい感じ。
井上陽水 - ガイドのいない夜
「少年時代」「最後のニュース」を収録した前作「ハンサムボーイ」が大ヒットした直後、92年にリリースされた井上陽水のセルフ・カバーアルバム。
マンチェスター、もっと言ってしまえば当時流行ってたキャンディフィリップ風味の「東へ西へ」、重厚感のある90年代シンセと繊細なアコースティック楽器が絡みつく「カナリア」、沢田研二に提供した曲をより臨場感あふれるスリリングなアレンジにした「just fit」など、92年当時のムードをふんだんに盛り付けたサウンドに料理されている。
先日、念願叶って陽水のライブを観れたんだけど、自分の曲・提供曲を活動時期関係なくまんべんなくもってきたセットリストは知らない曲はないくらいにヒット曲ばかりだし、もうすぐアーティスト生活50周年になるというのに、ライブも非常にエモーショナルな内容。そしてアレンジがとてもシャレていることもあり、バリバリの現役だった。
GORILLAZ - Humanz
今年の大本命GORILLAZの5作目。
おおざっぱに説明すると「架空の覆面バンドという体で、トランプ政権批判が連発するリリックをTRAP以降のコンテンポラリーなヒップホップに載せた、旬のアーティストとのコラボレーション満載の最先端で批評的なアルバム」となるんだろうけど、そう語ってしまうのはちょっと安直すぎる気もする。
マンチェスターの狂騒の中どさくさ紛れにデビューして、ロンドンという地域性・歴史をクローズアップしブリットポップシーンをけん引、その後USオルタナロックと向き合い、最終的にはゴスペルとカットアップまで辿り着きblurは空中分解、その後もゴリラズの活動ではUSヒップホップカルチャーに、そしてソロではマリミュージックなどの非英語圏の音楽にどっぷり浸かる・・・そんな中でデーモンが作るメロディ・歌詞というのは、いつだってシニカルでドラマチックで、まるで映画を観ているかのような冷静な俯瞰視点で、誰にだって心当たりのある事象のように描いたものだった。
ある一つの現状を嘆いてただ批判するのではなく、そうなってしまった現状を受け入れてサヴァイヴするためのファイティングポーズをとる、というのはブラーの2nd"For Tomorrow"のころからずっと発信していた彼なりのメッセージだ。だからこのアルバムもきっとそういうことなんじゃないかな、と思ってる。
そしてデーモンがそうやってファイティングポーズをとっている一方で、ブラーの名伯楽ドラム担当のデイヴは
I'm delighted and humbled to have been elected County Councillor for University Ward, Norwich. pic.twitter.com/xVrnjzwBCB
— David Rowntree (@DaveRowntree) 2017年5月5日
労働党の州議会議員として選出されていた。こっちもこっちでファイティングポーズをとっていた。