Battles - La Di Da Di
出来過ぎの前作「Gloss Drop」の、涅槃と泥道を行き来するようなテンションからどう進化するのかが気になってリリースを心待ちにしていたBattlesの新作。
「FF Bada」みたいなオリエンタルなムードを持つ曲もありつつも、基調となっているのは、Ableton Pushを多用した、天井知らずのテンションで繰り広げられるループ主体のエクスペリメンタルでミニマルなポストロック。
それだけを表現するバンドだったら世界中にたくさんいるんだけど、バトルズはそこにフィジカルをゴリッと突っ込んでくるところがすごいと思ってる。テクノロジーに踊らされるようで、ちっとも踊らされてない。テクノロジーをコントロールするのは結局フィジカルとアイディア、といわんばかり。特にジョン・ステニアーのドラムは凄みすら感じる。このアルバム、彼のプレイだけでも聴く価値あると思う。
Dub Pistols - Return of the Pistoleros
ロンドンの伊達男たちDUB PISTOLSの新譜。基調は前作までと同じくスカ、ヒップホップ、ドラムンベースで構成されていて、ノーマンクックがまだビーツインターナショナルやってたころみたいな、20年前のビッグビートムーブメントに近い音筋なんだけど、その辺の若い奴らには出せないやんちゃなオトナ感というか、ダーティミドルエイジの色気みたいなものが溢れていて、俺みたいなオッサンにはシビれる内容。
老いていくことに勇気が漲るアルバム。こういう大人になりたい。
Skrillex & Diplo - Skrillex and Diplo present Jack Ü
快進撃を続ける当代きっての千両役者プロデューサーSkrillexとDiploによる最強タッグJack Üのアルバム。
花冠系だとか、パフォーマンスとかいって結局CD再生しているだけじゃねーかとか、日本のEDMトップランナーは三代目J SOUL BROTHERSだとか、いろいろ言われているEDMシーンだけど、EDMはそもそもテクノやハウスではなくR&Bに源流がある音楽だと思っていて、たぶんダメな人にとってはずっと受け入れられないジャンルだと思ってる。
で、比較的その辺いいバランスでやってる2人の良さってなんだろう?と考えると(実際は分業制が確立されているんだろうけど)やはり「みんなのうた」を書けるソングライティングに尽きると思ってる。
Major Lazerもそうだけど、マスに響く「うたごころ」が半端ない。ジャスティン・ビーバー、ミッシー・エリオット連れてきても動じない横綱相撲。さすが。
ミムラス内藤彰子 - Fragment & waves
ミムラスの魅力とは何か?
俺は即答できる。彼女の魅力はその「強さ」だ。
ただ「(女性の)強さ」っていうのを「硬さ」や「鋭さ」みたいなものと勘違いしている女性って意外と多い。「私、Sっ気あるんですー」って言って、相手の気持ちとか社会性を完全無視してなりふり構わず攻撃・口撃する女性と一緒だ。それはただの「がさつで乱暴な人」だ。SMってそういうものではない。
・・・話が逸れた。女性の強さと言うのは、「硬さ」や「鋭さ」ではない。「腕力」でもない。それは「しなやかさ」だと思ってる。まさに剛でなく柔。
ミムラスは、話せば話すほどに芯の強い女性だと思うんだけど、それを前面に押し出すのではなく、全盛期の落合の流し打ちのような、ボールのスピードをやわらかさをもって狙いの方向に運ぶような感覚を兼ね備えている女性だと思っている。そんな彼女の人柄が音にも詞にも声にも出ているアルバム。
個人的にこのアルバムで一番好きな曲は「何の役にも立たない気持ち」という曲で、それはなぜかというと、歌詞の中の主人公の女性は、上手くいかなかった過去の関係性を後悔してて、曲の最後で「家のそばで止まるタクシー、降りてくるのは知らない人」と歌っていて。
渦巻くたくさんの気持ちを、たった1行で見事に表現しているこの歌詞も素晴らしいんだけど、そのタクシーを降りた知らない人にもストーリーがあるんじゃないかと思っていて、(手前味噌だけど)その人はもしかしたら「僕を乗せたタクシーは、君の家までもう少し」と歌うホンダレディの「二十九、三十」の主人公で、彼女とはまったく関係のない彼にだってさまざまな感情があって日常を生きているんじゃないか、、、と勝手に妄想していたら、妄想が感情を凌駕してしまい、もうなんか他人事とは思えなくなってしまったからだ。