TAMTAM - For Bored Dancers
俺が「これはダブだ」と初めて意識したのはクラッシュの「サンディニスタ!」だったと思う。
パンクの象徴だと思っていたクラッシュのCDから流れるユルユルでダルダルな"Junco Partner"に拍子抜けを食らったのを覚えている。高校時代はパンク~NWに傾倒していたので、スティーブ・リリー・ホワイトの秘技・半拍遅れの深いリバーブは耳慣れた存在だったし、もうちょっと経つとビースティ→グランドロイヤル経由で"jah"リー・ペリーを聴きはじめ、レゲエサイドからもずぶずぶと浸食していった。そして更に同時期テクノにハマっていた流れでON-Uにたどり着いた。ON-U総裁エイドリアン・シャーウッドの動向は今でも気が置けないし、世界を股にかけて活躍するON-Uの切り込み隊長・オーディオアクティブの存在は、バンドを始めたばかりだったこともあって、多大な勇気をもらっていた。
そしてフィッシュマンズ。無限の空間があるかのような音像と、それに反比例するかのような求心的に繰りかえされるミニマルな「きみとぼく」の歌詞の世界観。このギャップからくる浮遊感。もうたまらなかった。
とまぁ、好きな音楽の片隅に必ずダブが居た。ような気がする。
TAMTAM。ダブマナーに忠実なミックス、えげつないゲートエコーなどに絡みつく、お茶の間にも通用するフッキーなメロディライン。そしてどうしても高尚・孤高な存在になりがちなこの手のバンドにない、例えるならばいきものがかりにも匹敵するかのような等身大の目線。こういうバンド、ありそうでなかった。
Lily Allen - Sheezus
リリー・アレンがただの毒舌家ではなくすばらしい音楽家だと思わせる一番のポイントは、チャートに君臨する他のアーティストと較べて、過去の音楽に対する敬意をもって最新のサウンドをクリエイトしている点だと思ってる。
でき過ぎた前作"It's Not Me, It's You"収録の"not fair"のカントリーアプローチや、今作の"As Long As I Got You"におけるニューオリンズあたりを連想してしまうリフもそうだし、Facebookで冗談で歌っていたカンツォーネに至るまで、発信される音のさまざまな部分でそれは垣間見れる。
デビューアルバム"Allight Still"リリース当時は"SMILE""LDN"なんかの雰囲気から「スカを基調とした」みたいな評判があったけど、実はそれも「過去のトラディショナルなルーツミュージック」という大枠の引きだしのひとつに過ぎなかったんだな、と思わせるほど、彼女の歌はさらっと聴けるのに本当に情報量が多い。
そして彼女の復帰作となる3枚目。「言いたいことをいう格好いい女性=リリー本人」として"bitch"を連呼しまくる"Hard Out Here"をはじめ、相変わらずシニカルな歌詞と歌心はそのままに、サウンドは今までの作品と比べて非常にフラットな内容のような気がした。
今年で御年29歳。まだ30にすらなってないのか。彼女のミュージシャンとしてのアティチュードを結構、いや相当尊敬している。
The Royal Concept - Goldrushed
スウェーデンのPHOENIXことThe Royal Concept、満を持してのアルバムリリース。
Passion Pit以降のエレクトロ・ポップを通過したインディーダンスバンド風情を醸しつつも、the strokesみたいな紙一重でかっこいいリフがあったり、若いころのU2みたいなクールと情熱の境界をひた走るような側面もあったり、the wannadiesみたいな過去のスウェーデンバンドが持っていた若干ひねくれたポップセンスも随所で見え隠れしていたり、、、。
なんだろう、この若者の刹那の輝きを切り取ったようなパーフェクトなアルバムは。
今年の大本命なんじゃないかね。
Pixies - Indie Cindy
USオルタナの最重要バンドピクシーズ、実に23年ぶりとなるニューアルバム。
ピクシーズファンによるブログを読み漁ったところ「サーファー・ローザ」「ドリトル」あたりの、多くの人がイメージする「俺のピクシーズ」っぽい、という感想が多いような気がしたけど、俺は一聴して、デタラメで痛快な西海岸音楽が詰まったフランク・ブラックのソロにして俺の心の名盤「Teenager of the year」になんか似てるなと思った。
とはいえ再結成して10年経つから、大々的に「再結成アルバム!」と銘打たれるのもなんか気が引けるし、ボサーッとしてたらキム・ディールもいなくなってた(祝ブリーダーズ再結成)。でも"Bugboy"なんて、聴こえる訳がないのにキム姐のコーラスも何処となく聴こえるような・・・。
"What Goes Boom"の1発目の出音、ブラック・フランシス特有の"Indie Cindy"の投げやりなトーキングボーカル、"Greens And Blues"の枯れを通過し今の彼らだから鳴らせたグッドメロディ・・・ほんとこんな現役感がありつつも、過去の残像にも絶妙にユニゾンするようなアルバムが聴けるとは思わなかった。