Boy George - This Is What I Do
ボーイジョージ、実に18年ぶりのニューアルバム。
基調は"My Star"や"Play me"あたりのルーツレゲエなんだけど、冒頭の"King of Eveything"は、サビを頂点に緩やかに上り詰める、REMのような王道ポップスみたいだし、ハッピーマンデーズ世代直撃のクールなファンクネスが延々絡みつく"bigger than war"みたいな曲もあったりして飽きない。
とはいえ、このアルバムの一番のポイントは、まぎれもなく彼の声。
ポップアイコンとしてスポットライトを浴び続けた日々から、栄光と挫折を経験し、酸いも甘いも経験し尽くした人間だけにしか出せないような、ドライでいながら艶っぽいこの声。"It's Easy"なんてルイ・アームストロングにも匹敵するパワーを秘めていると思う。沁みる。
Karl Bartos - Off the Record
クラフトワーク辞めマンことカール・バルトスの、13年リリースの最新作。
"ツール・ド・フランス"みたいなビートとボコーダーボイスが印象的な"Rhythmus"、"ヨーロッパ特急"みたいなオケヒットと変拍子で展開される"Atomium"など、本家ネタキター!と喚起してしまいたくなる曲もあったり、本家よりもロビタ的な哀愁が漂う"The Tuning of the World"もあって「いかにも!」と唸ってしまう内容。
というか、彼もソロでクラフトワークからの差異性を突き進めているわけではなくて、ソロのライブでフツーにクラフトワークの曲ガンガンやってるみたい。今日から「フットワークの軽いクラフトワーク」と考えを改めます。
個人的にアルバム中一番シビれるのは、アルペジオだけで展開される"The Binary Code"。アルペジエーターいじってたら一撃でできました!みたいな曲なのに、どう考えてもこの人にしかならせない音。electric music(カール在籍のユニット)にこういう曲なかったっけ?
Stephen Malkmus And The Jicks - Wig Out at Jagbags
スティーブ・マルクマスの新作。
ベックプロデュースだった前作「mirror trafic」も傑作だったけど、今作も"Lariat"や"SMJicks Rumble at the Rainbow"みたいな、奇想天外だけれどなぜかほっこりするマルクマス節は健在だし、ホーンセッションが心地よい"Chartjunk"みたいな、古きよきアメリカンポップスみたいな曲もあったりして、さらに進化しているような気がする。
以前スティーブマルクマスの魅力を
・アメリカンポップミュージックへの情熱
・それを台無しにする構成力
・生まれ持って兼ね備えている熱海感(枯れ)
だと評したことがあって、「枯れ」は彼を語る上でのキーワードだと思っているんだけど、ここ2作はまさに枯れ花の狂い咲き状態。初めて「Summer babe」を聴いたときから、刷り込みのように思い込んでいるフシもあるかもしれないけれど、20年以上経った今でも大きなコンセプトの変更もなく、進化しつつもマイペースな活動を続けてて、いい歳のとり方をしているところが羨ましくて、ミュージシャンの端くれとしてすごい憧れている。
曽我部恵一 - まぶしい
スティーヴ・マルクマスのいい歳のとり方を日本のアーティストで例えると誰なんだろう?と考えてたんだけど、やはりこの人なんじゃないかなと思うのだ。スティーヴとジャストのタイミングでアルバムリリースも何かの因果か。
"汚染水""まぶしい"みたいなビートとグサグサ刺さる言葉で綴られる曲も、"ママの住む町"のアカペラも、ありふれた日常を描写し続ける、ある意味一番サニーデイっぽい"ちりぬるを"も、3Dメガネが付属されているジャケットも、いまどき全23曲67分というボリュームも、作っている時期の熱量が何のトリートメントもなくパッケージされていて、いびつで意味がわかんないんだけど、その混沌とした勢いを、曽我部恵一のような、それなりにキャリアのあるアーティストが作った、ってのが一番怖い。リリース以来恐る恐る聴いている。