Yeasayer / Fragrant World
ヒップホップにせよテクノにせよハウスにせよ、ダンスミュージックは所詮黒人音楽の猿真似、という言葉はだいたい白人音楽に対する軽蔑からくる言葉だと思うんだけど、白人がコンプレックス丸出しでもがいてるさまは、無様で未完成な反面、本物にはない輝きがあると思うので、個人的に大好きです。腕利きのプレイヤーを揃えて絶妙のファンクネスを提供したところで、それはニューオーダーにならないし、なるわけがない。
Yeasayerの新作。前のアルバムは「ちょっとエクスペリメンタルでサイケデリックで、でもポップな感じもあって、ボルチモアあたりにいるよねー。」程度にしか思ってなかったんだけど、この新作の持つ、トーンこそデペッシュ・モードみたいな80年代ニューウェイブ直系の湿っぽさなんだけど、なんというかこなれてないR&Bみたいな音のアプローチがが斬新過ぎる。なんかone & onlyな世界観。すばらしい。
ザ・スクーターズ / 女は何度も勝負する
渋谷系の裏番・アートディレクター信藤三雄率いるスクーターズがなんと30年ぶりのフルアルバムリリース。もちろん俺は当時の様子なんて知っている訳がないんだけど、宇崎竜童、伊集院幸希、志摩遼平などさすがの作家陣がずらっと並ぶ中で、特に橋本淳&筒美京平が手掛ける"Hey Girl"と小西康陽が書き下ろした「かなしいうわさ」がキレキレのパーティソングではあるんだけど、切なすぎて胸をギュッとつかまれた気分になる。モータウン、モッズサウンド風味の質感の中、フレーミングリップスやYMOのフレーズが時折出入りするいい塩梅のサンプリング精神っぷりも酸いも甘いも知り尽くした大人の音楽といった感じ。
Blur / Parklive
またブラーか、といわれてしまいそうなんだけど、オリンピック閉会セレモニーの裏でハイドパークでやっていたライブがすばらしくて!3年前のリユニオンハイドパーク公演と比較しても、街にもオーディエンスにも祝福され、最大限のパフォーマンスになったのでは?と思うほどいい演奏。以下気が付いた点箇条書き。
・"London Loves"や、ライブ定番だけれども"Parklife"みたいなロンドン賛歌は予想できたけれども、"Young & Lovely("Popscene"のカップリング)"をまさかこのタイミングで演奏するとは思わなかった!これだけで元取れたようなもん。
・「13」収録の"Caramel"はライブでは初披露だと思う。ギターのフレーズルーパーを使い、生演奏ながらもアルバムに超忠実な演奏。後半のグオーッ!てくるところでホーンも加わりアルバム以上のカオスっぷり。これまでの個々の活動がうまくフィードバックしている感じ。
・グレアムが"coffee & TV"歌った!しかも自力でフェードアウトする芸の細かさ。
・そして"Sing"。ブラーを名乗る前、セイモア時代の曲にして映画「トレインスポッティング」の裏テーマソング。ブラーと比べるなんて恥ずかしくなるほどの最末端の超末席の存在として、俺もバンドやってるからちょっとだけ判るんだけれども、アマチュア時代の曲をデビュー21周年のバンドがこのテンション、クオリティで演奏できるのは本当にすごいと思う。あるいはデビュー前からバンドとして完成されていたのかもしれない。
・個人的なハイライトは21周年を回想するかの如し新曲"Under the Westway"でしっとりしたムードからの、やんちゃなインスト"Intermission"で全部ぶっ壊している部分。
奇妙礼太郎トラベルスイング楽団 / LIVE GOLDEN TIME
そう、今年フジロック行った!もちろんローゼス目当てで。
ローゼスのライブはそりゃもう感動的なショウで、またいつかここで書こうと思っているんだけど、その後休憩がてらフードコート横の苗場食堂でやってた奇妙礼太郎がすばらしかった。ホーン隊が横並びできないほどの狭いステージで、ものの20分ちょっとのライブだったんだけど、疲れた体を引きずる大量の通りすがりの人も含め、その場にいた全員が幸せな気分になっていたと思う。
クボタタケシの「ミックスシーディー」で最初聴いたころは俺も、有名曲の演奏に別の節をつけるという新手のサンプリングミュージックだと思っていたんだけど、これはもう奇妙礼太郎の声がなければ通用しない独自の音楽だと思う。