[散弾銃の隊長も]最近聴いたCD201702[母の名を叫ぶ]
Weaves - Weaves
トロントの4人組ギターポップバンドWeavesのファーストアルバム。
全体を覆う雰囲気はピクシーズのようなダイナミックレンジが際立つガレージサウンドなんだけど、"One More"はボーカルのジャスミンのファンキーな歌唱も相まって荒っぽいアラバマ・シェイクスみたいだし"Tick"のサイケポップっぽいうねりを持ち合わせたトリックスター感はペイブメントのようで、ひとクセもふたクセもある。
なんだかんだ言って生バンドの醍醐味って、せーの!で音を出した時のダイナミズムだと思っていて、じわじわ曲が立ち上がっていく傾向が高い最近のUSインディーロックのアタック感のなさって、なーんか残念なんだよなーと思っていたところにこの殺傷能力高めのガレージロック。うれしい限り。
The XX - I See You
今年の最重要アルバムの1つであることは間違いないThe XXの3枚目。
ロミーとオリヴァーによるバービーボーイズばりの掛け合いは健在だし、曲ごとにいろんな側面を見せながらも求心的でナイーブなサウンドは既定路線ではあるんだけど、今回は特にサンプリングのやり散らかし感がすごい。冒頭「Dangerous」のファンファーレでまずあっけにとられる。AORっぽいオープニングから一転、黒いコーラスサンプリングループを駆使したR&Bのように展開していく「On Hold」なんかに顕著なんだけど、「ロック」や「エレクトロ」みたいな狭義ではなく、もうひと回りもふた回りも大きな「ポップ」として位置付けられるべきなんじゃないか、と感じさせられる満を持して感。
とはいえベースラインはいつも通り八分音符のルート弾きばっかりで、それが逆にぐっと聴き手を引き付けるところが、このバンドの一番のポイントだと個人的には思ってる。
Margaret Glaspy - Emotions and Math
カリフォルニア出身のシンガーソングライター、マーガレット・グラスピーの昨年リリースのファーストアルバム。リリース直後から英米の各音楽誌で絶賛されているそうで、Rolling Stone誌で「エレキ・ギターを持ったホットな女」なんて紹介されたらしい。
バークリーを学費不足でドロップアウトした後たくさんのツアーミュージシャンを歴任した苦労人らしいんだけど、温かみがあるけど男前度も高めのラフなギターサウンドに乗せて日常の中で出会う事象をシンプルに乗せて歌われる歌詞の雰囲気はいわゆる「女性性」がすべてを凌駕する内容ではなく、非常に心地いい感じ。日本人にたとえて言えば中島みゆきでも戸川純でも矢野顕子でもなく竹内まりや、みたいな。あとなんとなく、この人の作曲の手癖が昔のPosiesみたいなところがある点も惹かれるポイント。
音の雰囲気がアラバマ・シェイクスみたいだなと思ったらアラバマ・シェイクスを手掛けたショーン・エヴェレットがミックスを担当。納得も出来るし、時の人連れてくるほど期待されているんだなと思った次第。
Clap! Clap! - A Thousand Skies
イタリア・トスカーナ出身Clap! Clap!のセカンド。アフロミュージックのサンプリングとベースミュージック、ミニマルテクノ、ジューク、ヒップホップetc.を掛け合わせていったら、熱帯雨林の秘境を通り越して宇宙までぶっ飛んでしまった!みたいな、混沌としつつも地肩の強いダンスミュージックに仕上がっている。
アフロビートとジュークの怒涛の三連符が合わさったり微妙にずれたりする中、スーッと抜けるファルセットボイスにグワーッと持っていかれる"Nguwe"、カリンバっぽい変拍子アルペジオとダウンビートが心地よい"Hope"、"A Thousand Skies Under Cepheus' Erudite Eyes"なんてURの"Hi-Tech Jazz"のような90年代テクノの高揚感すら感じとれる。以前紹介したMbongwana Starもそうだけど、打楽器の熱気と空が高くてシン...と冷えいるクールネスが融合しているダンスミュージック。音の絡み方とか解釈の仕方が複雑で混沌としているけれど、目的と手段がひっくり返ることなく、きちんとダンスミュージックとして成立しているところがすごい。