とても丁寧に作りこんでいる演奏のなかで淡々としつつも非常にエモーショナルに響く声、そしてバシバシ突っついてくる歌詞。歌詞の意味が知りたくて歌詞カードを真剣に追いかけた日本の女性アーティストのアルバムってすごい久しぶりかもしれない。
女性であることを前のめり気味に吐き出すアーティストと、1人称を「僕」「僕ら」など女性1人称以外の目線で歌う女性シンガーの二極化が進む中で、女性であることをニュートラルにアウトプットする意識というか、深いけど重くない情念にあふれたこのアルバムは、例えば一時期のCharaとか聴いていた人はスーっと入ってくるんじゃねーかな、と思う。
あとアルバムの冒頭がリバースなんだけど、この人の声はそれがほんとよく似合う。あのイントロ聴くだけで条件反射で背筋が伸びる。
彼らの1stを聴いたとき「爽やかなJoy Divisionみたいだなぁ」と思ってたんだけど、気がついたらがっつりJoy Divisionになってた。彼らの曲を覆ってたちょっとだけ湿気を帯びた5月下旬の透き通ったそよ風が、そのまま分厚い雨雲を運んできたかのような重い空気に変容していた。それでも決して雨は降らない感じは、好みが分かれるところだろうけど、俺は嫌いじゃないぜ、こういうの。
Mark Stewart - The Politics of Envy
ブリストル極道連合の親玉マーク・スチュワートのニューアルバム。プライマル・スクリーム、ダディ・G(マッシヴ・アタック)、リー・ペリー爺、リチャード・ヘル、スリッツのテッサ・ポリット、レインコーツのジナ・バーチ(!)、キース・レヴィン(!!)が参加、そして共同プロデューサーがキリング・ジョークのユース、、、とまぁ豪華な(そして悪そうな)メンバーを揃えてるんですが、マークが歌ってしまうと、見事なまでにすべてマーク色(ガンプラでいうと黒鉄色)。「多彩なゲストが絢爛!」とうたい文句にしているアルバムとかよくあるけど、これくらい強靭な個性がないと、ただのコンピに成り下がるよなぁ、と肝に銘じた次第。