ベスト盤・裏ベスト・ライブ盤をまたいだここ数作のジャンク感漂うエレクトリックな作品から一転し、ソリッドなロックンロールアルバムになったプライマルスクリームの新譜です。印象としてはハウスやアンビエントテクノを取り込んで、マッドチェスタームーブメントにずっぽりはまって制作された名作「スクリーマデリカ」を出した後に、アメリカ南部のブルース/ソウルに急接近した「Give Out But Don't Give Up」のような感触。
大幅なサウンドコンセプトの変更があっても中途半端になることなく共存できるのは、プライマルスクリームはやっぱりグルーヴ感が命のバンドだから。本人たちは「グルーヴさえあればその音がどっから鳴っててもオールOK」とでも言ってそうで、いったいどこがこのバンドのド直球なのかさっぱりわからない。結成20年を超えてもこの尻軽さは脅威としか言いようがない。
...と軽くいいましたけど、20年ですよ?20年ほぼずーっとシーンの最先端にいるんですよ。たとえば海の向こうアメリカでは、ジャンルは違えど同時期から活躍しているバンドにレッド・ホット・チリ・ペッパーズがいると思うんですが、彼らは既に「枯れ」の部分を自分たちの持ち味の一部にしている節があると思うんです。それに較べてこのやんちゃっぷり。死ぬまでこうあってほしい。