[ただし絶対常識の]最近聴いたCD20160615[範囲内でね]

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Donnie Trumpet & The Social Experiment - Surf

シカゴのトランペッター、ニコ・セガール(=ドニー・トランペット)と、同じくシカゴ出身のチャンス・ザ・ラッパーをはじめとしたシカゴ/LAの若手によるバンド・プロジェクト。
トランペットがフィーチャーされている曲はそこまでなくて、地元のミュージシャンが中心となりつつも、バスタ・ライムスやエリカ・バドゥみたいな大御所まで参加していて、ヒップホップの枠にとらわれないスケール感と鮮やかさ。テクノ、ジャズ、ジューク、ロック、音響系etc.音楽的にも雑多ながらも歴史があるシカゴならでは。
ワンカメでミュージカルのように展開するMVが最高にハッピーでかっこいい。



このアルバム、DatPiffから無料ダウンロードできるんだけど、ミックステープで実績作り → ころあい見てお金を取るビジネスモデルで、太い客から根こそぎもぎ取る日本の市場とは真逆のベクトルに進んでいるのも興味深い。

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TV Girl - Who Really Cares

LA出身のサンプリングポップバンドTV Girlの2nd。サンプリング+ダンサブルな生演奏に、リバーブ多めでゆらゆら揺れるだるくて甘ったるいメロディは合成甘味料てんこ盛りの欧米のお菓子のよう。中毒になる。



TV Girlと言えば、トッド・ラングレンの"Hello,It's me"を大胆にサンプリングした"If You Want It"がトッド本人に怒られてトラブルになった、ってくらいしか認識なかったんだけど、その"If You Want It"に関して、"Hello,It's Me"をサンプリングした際の楽曲の著作権関係のクレームは無視したのに対して、歌詞として引用していた作家Tucker Maxのショート・ストーリーの権利はきちんと買ったんだそうだ。



サンプリングとは何か?著作権とは何か?に対する確固としたポリシーを感じるすごい話。アナーキックな姿勢とは相反するファイティングポーズ。かっこいいな。



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PJ Harvey - The Hope Six Demolition Project

90年代前半のスティーブ・アルビニとの蜜月は、オルタナ直系サウンドよりも「隙あらば脱いでる」「歌詞が性的なことばっかり」「ワキ毛生えてる」とか、ザックリといえばパティ・スミスみたいな「男前女」の印象だったけど、年を追うごとに女性特有の(と書くと本人の意にそぐわないのかもしれないけど)エキセントリックさ・・・俺はこれを勝手に"月経感"と呼んでいる・・・が抜けて、母性ともちがう「まろみ」を帯びてきたように感じて、前作"A Woman A Man Walked by"あたりから気持ちよく聴いている。



前作から6年振りとなる今作もジョン・パリッシュとの共作でブルージーなガレージ感がありつつも、凛とした姿勢。映像も、コソボやアフガンに行った模様のはずなんだけど、アルバム同様ちょっとキュートなところすら見え隠れする。お前がいうなという話だけれど、いい塩梅の女性になったなと思う。



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Captain Beefheart - Trout Mask Replica

今から12年前に、俺はこんなレビューを書いていました。

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いや、いまさらこんな超有名なアルバムを取り上げるのもどうかと思うんです、自分でも。
でもね、コレはひとこと言っておきたいと思いまして。

もちろんこの有名なジャケットのアルバムのことは知っていたんだけど、僕がこのCDを初めて聴いたのは、高校生んとき、XTCが「King For A Day」のカップリングでこのアルバムに収録されている「Ella Guru」をカバーしていたのがきっかけで。



フランク・ザッパが大好きな同じクラスのTくんがこのCDを持っている、っていうんで、早速借りて家で聴いてみたら、アバンギャルドな演奏と、フリーキーなヴォーカルがエンドレスでぐるぐる回る内容で、そりゃもう全然意味なんて解らないわけです。同じフリーキーな演奏でも、ポップグループやPILとかはパンクっぽい荒削りな勢いと、言葉で説明できない説得力のあるファンキーなリズムがあったから「かっこいい!」と思ったし、ザッパなんかも混沌としつつもトリートメントされてて音楽として聴きやすい部分があると思うんですが、このCDについては、意味が解るどころか、聴いたあと、まともに眠れないくらい不気味で。

その翌日登校したら「コレわかんない奴は音楽全然わかってない」と踏み絵を踏ませるような眼差しで「どうだい、すごいかっこよかっただろ?」と早速たずねてきたTくんには「これ、全然訳がわかんなかった」とか言えるわけがないんです。それじゃあまりに決まり悪いんで。
だからもちろん言いましたよ、「やーすごいね、コレ!聴いててドキドキしたよ!」って。その返答自体には間違ったところはなにも無いんですが、自分自身に対して、かすかに、でも確実に嘘をついて。

でもね、そんときは「あ、でもコレは僕が大人になった時、いつかきっと良さがわかる日がくるんだな」と勝手に思い込んでいたわけです。大学生になって、ニルヴァーナのカート・コバーンが影響を受けた、なんて記事を目にして、このCDを買って改めて聴いてみたんですが、やっぱり印象は高校生んときのままで。

で、もう初めて聴いたときから10年近く経って、曲順や曲の構成もばっちり憶えているくらいに聴いているんですが、やっぱり解らないんです。コレの良さが。や、ものすごいパワフルなのは解る。混沌とした中に実は秩序がある演奏だってことも解る。ぼんやりとだけど、たぶん僕はこのCDが好きなのかもしれないなぁ、っていうのも解るんだけど、とはいえ、いまだにどこが良いのかわからないままでいます。

もう10年したらわかるのかな。や、多分一生わかんねーんだろうなぁ、と予想しているんですが、どうなんでしょうか。

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・・・そしてさらに12年、はじめて聴いたときからゆうに四半世紀経ってるはずなんだけど、いまだにこのアルバムがわからないでいる。これまでたくさん音楽を聴いてきて「何がいいのか理解はできるんだけど、あまり積極的に好きになれない」ってアルバムは結構あるんだけど、「何がいいのか全然理解できないけど、なんか好き」ってアルバムはこの1枚くらい。